Wakaksitesis

感想・備忘録・夏休みの自由研究

8月の履修作品

2023/08の履修作品メモ。

 

映画『君たちはどう生きるか

www.ghibli.jp

宮崎駿監督作品。2回見た。面白いかと問われれば頷けないけれど、とても良い作品と思う。「宮崎駿だ~っ」って感じだった。細かいところを挙げたらキリがないのでここでは概観程度にとどめておく。
まず、「悪意」の話。ここでの「悪意」とは積極的加害(害そうと思って害する)だけでなく、生きるには食わねばならないとか存在するだけで空間を占有してしまうとか、そういう消極的加害も含む。人間は「悪意」を持たずして生きられないし、「悪意」を持たずに生きているならそれは人間ではない。宮崎作品に一貫して見られるもの。
また、「種をまくこと」の話でもあった。作中に原作小説『君たちはどう生きるか』が登場するのだが、そこにミレーの絵画『種をまく人(Le Semeur)』が載っている。この絵画では、一人の農民が種をまく姿が描かれており、農民の力強さを表現しているという見方もある。農民にとって種をまくことは即ち生きることそのもの。種をまいても芽を出すとは限らないし、実を結ぶとも限らない。それでも実ることを信じて、私達は種をまく(=生きる)。とても根を張れそうにないところにまくことすらある(参考:「種を蒔く人」のたとえ | 横浜英和学院)。ただここで重要なのは、種をまく私たちも、元々は種をまかれた側だということ。宮崎駿が影響を受けただろう『イソップ童話』や『君たちはどう生きるか』が作中に登場することに鑑みても、そういうことだと思う。
最後の場面で、眞人(主人公)が大叔父様の世界から拾っていた石を見て、アオサギが「これだから素人は。まぁ大した力もないし、すぐに忘れちまうだろうよ」と言い捨てる。私達はしばしば、作者の本懐でないところ(「大した力もない」とアオサギが宣うもの)でしばしば感動したり、影響を受けたり、勝手に救われたりする。結局そういったことも含めて忘れてしまう。でも、それでいい。意識のうえに上らずとも、それらはきっと私達に影響を与えている。種がまかれているということだ。自分がまいてきた種は、実は自分にまかれてきた種だった。自分に種をまいた人もまた、それより以前の人に種をまかれた。その連なり。それは予定されたものでも計画されたものではない。全てが行き当たりばったり。「君たちはどう生きるか」というタイトルは、「君たちは、(忘却の中に)まかれた種をどんな実として結び、そしてどんな種をまくか」という意味だと思った。
あと、アオサギの鳥形態のアニメーションめちゃくちゃ好きだった。鳥~ッてかんじ(語彙力)。
原作は未読なので、読みたいな。読んでから見たら、また違ったふうに見えるだろうな~。

 

ゲーム『薄桜鬼 真改 風華伝』原田左之助ルート

4月から始めてやっと最後までやれた(さぼりすぎ)。
ごく普通の平穏な暮らしを望む、優しい男の物語。だから大義のためでなく民の暮らしを守る為に戦うし、守るべき女子供を貪る羅刹を許さない(だから自分も羅刹にならない)。また、彼が優しいのは色んな失敗を経験したからだという。再び同じ失敗を繰り返させまいという希望。彼の求める「壊れない強固な関係」はそれと同じで、最初は弱い(=偽物の)関係から始まるけれど、迷ったり立ち止まったりするけれど、それでもそれを繰り返すうちに強い(=本物の、誠の)関係になっていく。
龍之介に対する「俺はただ、背を押しただけだ。前に進むことを決めたのは、おまえだよ」とか、ああああ~~いいセリフ~~~~ってなる。まあこれは真改からのセリフだと思うけど、それ以外にもいま読んでみたら左之の発言は琴線に触れるものが多い。十数年前にやったときはピンと来なかったんだろうけど、いまなら左之のことを好きになっていたかもしれないと思う。吸血シーンがないのに一番エッチだ(遊佐パワーも強い)し、あまりにも人情に溢れてるし。まあ、もう土方さんにぞっこんなので、鞍替えをしたりはしないのですが。しかしまあ、良い男だなあと思う。

 

アニメ『Vivy -Fluorite Eye's Song-』

vivy-portal.com

100年後の未来でAIが人間を滅ぼすのを阻止する2人のAIの物語。バディもの。マツモノ(CV:福山潤)の喋りがクセになる。
第1話の冒頭でAI個体が容赦なく人間を殺していく描写が良かった。また、歌がテーマでもあるので、OPやEDに特殊演出が入ることが多く、それも良かった。
複数使命があると機能不全を起こすということで、1つのAIには1つの使命しか与えない決まりになった世界なんだけど、そこには構造的な欠陥がある。結局その1つの使命の達成には多くの前提があり、その前提を満たすべく動けば二律背反に陥ることになる。それはもう、人間のような世界の切り取り方をする存在の宿命である。主人公ヴィヴィはそれによってエラーを起こしてしまったけれど、最終的にはなんやかんやあって矛盾を抱えた存在(=人間)になったんだと思う。
少し気になったところは、作中で100年の時間が経つさなか、人間が成長して老いて死んでいく部分は描写があったものの、技術革新の描写が手薄だったこと。それがないならSFじゃなくてファンタジーで良かったと思う。

 

アニメ『地獄楽』

www.jigokuraku.com

ごちゃ混ぜ宗教モチーフが楽しい。
弱さには強さも必要。人間はあるものをふたつに分かち、分かたれた物でもって世界を理解(分割・分析)するが、境界を隔てたうえでその分別を内在的に超越することが大事になっている。仏教的には「不二」(無分別の分別)にあたると思う。
江戸時代なのに「イメージ」やら「バージョン」やらの横文字が結構フランクに出てくるから若干気になる。現代人向けに多少翻訳されていると考えても良いけど、もにょる。
CV木村良平のキャラ(亜左弔兵衛)が強すぎて笑ってた。適者生存のコンセプト好き。

 

漫画『山田くんと7人の魔女』

学園ラブコメ。主人公である問題児と学年1位の才女の身体が、ひょんなことから入れ替わってしまうことから物語が始まる。そこから学園に「魔女」と呼ばれる特殊能力をもつ生徒が7人いることが判明し、誰が魔女なのか、どんな能力なのか、どう対策するか、ということを軸に物語が進んでいくので、異能バトルの側面もある。
多感な青春期に魔法のような特殊能力に振り回される少年少女が、大人になると夢から覚めるようにその力を失ってしまう、という類型(魔法が使えるのは子供だけ。ピーターパンの類型?)。ただ魔法といっても物体を操作するものではなく、「入れ替わり」「魅了」「未来視」「過去視」「テレパシー」「認識不可」「記憶操作」など、精神的な、特に人間関係に焦点を当てたものになっている。思春期っぽくて良い。
念入りな「見つけてくれてありがとう」の話で、私はこの手の話に弱い(好き)。終盤はそれまでの布石を全て回収しながら至るべきゴール(主人公とヒロインがくっつく)まで丁寧に運んでくれる。良い作品。

 

漫画『ブルーピリオド』14巻

八雲の生い立ちが描かれる。八雲が見上げていた、死んでしまった画家の話。今ここにいない人の話。これを聞いた八虎がどう思うのか気になる~。
コンペと八雲の生い立ちを通じて、美術には金がかかる、という話もしている。

 

ゲーム『あんさんぶるスターズ!!』「輝く真実のアトランティス」イベスト

めちゃくちゃ走った(当社比)イベント。桃李がひたすら可愛い。生徒会長選の演説の桃李可愛すぎる。割と何から何まで英智の掌の上だったけど、それでも桃李の成長を実感できる良いお話だった。最初に躓こうが、途中で何度転ぼうが、挫けずへこたれず、高みへと飛んでいくことを目指す。泥臭い成長譚は、観客にはもちろん隠して、あくまで輝かしく舞い踊る。アイドル~~。世界で一番可愛いよ~。