Wakaksitesis

感想・備忘録・夏休みの自由研究

9月の履修作品

2023/09の履修作品メモ。

ドラマばっかり。

 

ドラマ『VIVANT』

https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/

久しぶりに「毎週ドラマを追う」という行為をした。毎週展開に裏切られて楽しかった。ノコルを演じる二宮和也が良かった。黒須を演じる松坂桃李も良くて、「俺だけには言っておいてほしかった」のシーンが最高だった(BLじゃん)。満足。続編があるなら見たい。
物語の舞台は、別々の思想的背景をもつ4つの勢力が拮抗する架空の国家・バルカ。随所に宗教的な描写が盛り込まれており、争いの火種となっている。

ネタバレ 謎のテロ組織「テント」は、紛争孤児が安らげる場が起源だった。それでも奪われた者たちが生き残るためには、他から奪うしかない。善を為すとき、同時に悪も為しているものである。
テントのトップであり乃木の父・ベキは「宗教を争いの火種にしてはいけない。日本には八百万の神という考え方があり、異なる思想を持つものも弾圧せず、理解しようとする寛容な精神がある」と述べる。宗教を争いの火種にしてはいけないというのも、相手を理解しようとすることが大事だというのもその通りだけれど、日本がそういった精神で満ちているかというとそうではないのが悲しい。
VIVANTには数多の伏線があるけれど、中でも感心したのは、粛清の場面。不正をして組織の金を着服した構成員を殺す場面だ。初見では単に「テントが冷酷な組織である」と印象付けるシーンに見えるが、テントの内情を知るにつれ、テントは冷酷からはほど遠く、仲間を大切にする組織だとわかってくる。最終回、くだんの粛清はノコルとテントの繋がりを断つための例外的処理だったと判明する。「最初に出てくるものが典型例であると思わせておいて、実はそれが例外である」という伏線の手法(叙述トリック)が美しい。

 

映画『シャイロックの子供たち』

movies.shochiku.co.jp

金を貸すシャイロック側の話。シャイロックとは、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』に登場する金貸しのこと。ヴィランの立ち位置である。
決め台詞といい、不正の構造といい、『半沢直樹』のパロディっぽい。
不正で手に入れた金は返せばいいというものじゃない。不正をしたという負債は返せない。それが更なる不正を呼ぶ。
大きい不動産になると、その売り買いもたくさんの銀行の立ち合いのもとにやらないといけなくて大変なんだなぁって思った。

 

ドラマ『半沢直樹

https://www.tbs.co.jp/hanzawa_naoki/

ちゃんと見たことがなかったし、『VIVANT』が面白くてその合間に、2013年版と2020年版の両方を見た。
誠意の塊みたいな男が、誠意ある行動で伸し上がっていく物語。誠実さを突き詰めると、有能さに転化するだと思う。毎度不正に手を染めた人物が登場して悪役を演じるが、誠意を貫き通せるだけの強い精神が半沢という男にはあり、彼らにはなかったという話。そう考えると悲しみがある。(まあ、半沢の方が、その悪役の不始末や不正の流れ弾を喰らってるだけだから、かわいそうなんだけど。)
怒涛の展開でわくわくするし、堺雅人香川照之の演技は良い意味で外連味がきいてて面白い。黒崎が半沢のことを「ナオキ」呼びするの好きだった。

 

漫画『りんかね』

ブコメ。絵柄がかわいい。
reincarnation(輪廻転生)。前世は江戸時代の武士3人だったのが、今世は現代の高校生3人になっている。1人だけ男の子で、他2人は女の子に生まれ変わっている。前世での関係に縛られて、今世での関係がアレコレなる。
個人的には、10年前のことすらあやふやで夢のように感じられるので、前世の記憶とかあってももっと夢みたいなんだろうな、と思う。

 

漫画『サタノファニ』26巻

冬雪さんの能力が催眠誘導なのは解釈違いだったけど、これはこれで良かった。
男社会な劇団業界、演技と人格。演技をし続けるうちに、それを本当の自分と錯覚してしまう。裏と表が反転する。
大切なものを奪われ続けるだけならそういう運命だと諦めがつくのに、なまじ優しさというものが存在すると知ってしまったために、逆に絶望してしまう。

 

ゲーム『ポケットモンスタースカーレット ゼロの秘宝 前編「碧の仮面」』

www.pokemon.co.jp

ポケモンSVのダウンロードコンテンツ
共同体とよそ者。異物を受け入れる話。ゼイユが最初に主人公(たち)を追い返そうとしたのは、仮面をつけてないオーガポンが村に受け入れられなかったのと同質のものだと思う。祭りという非日常な場では異界との交流が為される。人々は仮面をかぶって祭りに参加する。仮面をつけたものは等しく客人(まれびと)である。だから、仮面をつけたオーガポンは受け入れられた。正体,本性を隠すものとしての仮面。
自分の本当の欲求を隠し、ある意味でおどおどした仮面をかぶっていたスグリは、自分の本当の欲求が危機に晒されて仮面を破壊する。自分の仮面を割ったスグリが、DLC後編でどうなるのか楽しみ。

 

ドラマ『ケイゾク

ドラマSP『ケイゾク/特別篇「死を契約する呪いの木」』

https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d0043/

https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/d0216/

『SPEC』の前身にあたる作品。天才女・柴田純(演・中谷美紀)と直感男・真山徹(演・渡部篤郎)のバディ刑事もの。最初のうちは当時にしては演出が珍しい程度の刑事ドラマなんだけど、5話に未来予知能力のある人物が登場してから、怪奇ものの雰囲気を漂わせ始める。朝倉という、マインドコントロールの能力(このマインドコントロールの演出が結構すき)をもつ人物が登場し、次々に「間接的な殺し(自殺をさせることを含む)」を犯していく。このマインドコントロールの力が凄まじく、果ては「任意の対象に自分のことを「朝倉」だと思わせ、影武者・デコイとして機能させる」みたいなことまでやってくるので、ドラマでは最終的に誰が本物の朝倉なのか分からず、捕まることはなかった。
とにかく、「法で立証できない特殊能力による犯罪をどうすればよいか」みたいな発想が、『SPEC』に繋がっているのだと思う。
若かりし日の渡部篤郎、かっこいい。

 

映画『ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer

朝倉との最終決戦。人知を超越し、人間には太刀打ちできない能力を持つ朝倉が、なぜ人殺しを続けるのか。その答えは「死後の世界で自分とひとつになるため」だと言う。人類補完計画じゃん! 愛とは一つになること。朝倉は愛だけを求めるが、それに対する主人公側の回答は「愛も憎しみもあってこその人間」「お前なんかと一つになりたくない!」だった。何でもかんでもと一つになってしまえば、愛は愛である意味を失うだろう。
ここから『SPEC』『SICK'S』にも「朝倉」と呼ばれる存在が登場するが、そこから考えるに朝倉とはおそらく「誰の心にもある独善的な部分」みたいな感じだと思う。そしてそれが「悪」である、って感じなんだろうな。

 

ドラマ『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿』

https://www.tbs.co.jp/spec2010/

放映当時見たけど、結構忘れてるし『ケイゾク』を見たので再度視聴。
ケイゾク』と似た、天才女・当麻紗綾(演・戸田恵梨香)と直感男・瀬文焚流(演・加瀬亮)のバディもの。
ケイゾク』を見てからだと、あまりに多くのモチーフが重なっていることに気づく。「殺人を犯した医者は逮捕するべきか」「記憶は脳にあるとは限らない」など。特にドラマのラスボス地居が朝倉と同じすぎる。

地居「何も考えず僕のものになれば、今後苦労することはない。幸せに暮らせる。辛いことや悲しいことを味わうことも決してない。人間がずっと苦しんできた煩悩から解放してあげられる」
当麻「辛いことや悲しいことだって、私の大事な財産だよ」

独善的な愛。自分によって愛されれば人は幸福になれるのだから、人は自分のものになるべきだ、という思想。でもそれは、人から拒絶されてしまう愛なんだね。悲しい。あまりにも朝倉。
また、「心臓が息の根を止めるまで真実に向かってひた走れ」というセリフが出てくるけれど、これは「人間は真実に辿り着くことなんてないが、真実に向かい続けろ。何か安易なものを真実と認定したとたん、それは死んだと同義である」みたいなメッセージに見えた。ジョジョ5部の「大事なのは真実に向かおうとする意志だ」という話を髣髴とする。

 

ドラマSP『SPEC〜翔〜』

映画『SPEC』「~天~」「~結~ 漸ノ篇」「~結~ 爻ノ篇」

風呂敷を盛大に広げてから、そのデカくなりすぎた風呂敷をなんとかして畳もうと頑張った感じの作品群。
世界全体が云々とかいうより、特殊能力を使って行われる犯罪事件をもっと素朴に小規模に扱っていってくれればいいのにな、と思う。瀬文が何があっても死なないので、バケモノすぎる。
オチとしては、当麻が世界から消える代わりに、破滅の未来が回避できるようになった……みたいな演出で、これ『まどか☆マギカ』じゃん、って感じ。当麻は円環の理になったのじゃ……。
高慢な向井理や取り乱す向井理が見れたのは良かった。
ちなみに、テレビ版の話数は十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)で数えられており、最後の「癸(キ)」が「起(キ)」になる演出から、このタイトル群である。即ち、「承=翔」「転=天」。そして「結」は「漸(ゼン;前)」と「爻(コウ;後)」である。これで「起承転結」。

 

ドラマ『SICK'S 〜内閣情報調査室特務事項専従係事件簿』

https://www.tbs.co.jp/sicks_specsaga/ha.html

『SPEC』の続編。『ケイゾク』『SPEC』に似た、天才女・御厨静流(演・木村文乃)と直感男・高座宏世(演・松田翔太)のバディもの。
ケイゾク』『SPEC』に登場した人物たちがたくさん出てくるし、変なルーチンをもつSPECホルダーもたくさん出てくる(消しゴムの人がすき)ので、それは楽しかった。ただ、「SPECサーガ完結編」と銘打たれている割に完結した感じはしない(最終回の最後に「継続?」って文字出してる)し、なんだか終わり方が釈然としなさすぎる。第1話の冒頭のシーンから「数か月前…」と遡る形で始まったくせに、最終回になってもそのシーンにたどり着かないし。不満は多い。ちゃんと終わらせてほしかった。