イサク奉献。
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英訳出典:BibleGateway.com: A searchable online Bible in over 150 versions and 50 languages.(English Standard Version)
和訳出典:口語旧約聖書 - Wikisource
第22章
1. After these things God tested Abraham and said to him, “Abraham!” And he said, “Here I am.”
これらの事の後、神はアブラハムを試みて彼に言われた、「アブラハムよ」。彼は言った、「ここにおります」。
2. He said, “Take your son, your only son Isaac, whom you love, and go to the land of Moriah, and offer him there as a burnt offering on one of the mountains of which I shall tell you.”
神は言われた、「あなたの子、あなたの愛するひとり子イサクを連れてモリヤの地に行き、わたしが示す山で彼を燔祭としてささげなさい」。
3. So Abraham rose early in the morning, saddled his donkey, and took two of his young men with him, and his son Isaac. And he cut the wood for the burnt offering and arose and went to the place of which God had told him.
アブラハムは朝はやく起きて、ろばにくらを置き、ふたりの若者と、その子イサクとを連れ、また燔祭のたきぎを割り、立って神が示された所に出かけた。
- saddle X:Xに鞍を置く (saddle:鞍)
- 命令を実行すべく行動を起こすアブラハム。
4. On the third day Abraham lifted up his eyes and saw the place from afar.
三日目に、アブラハムは目をあげて、はるかにその場所を見た。
5. Then Abraham said to his young men, “Stay here with the donkey; I and the boy will go over there and worship and come again to you.”
そこでアブラハムは若者たちに言った、「あなたがたは、ろばと一緒にここにいなさい。わたしとわらべは向こうへ行って礼拝し、そののち、あなたがたの所に帰ってきます」。
- 神のため、信仰のための嘘をつくアブラハム(「わたしとわらべはあなたがたの所に帰ってきます」と述べているが、この時点でアブラハムにそんな気はないはず)。第20章では神に疑いを持っていたために嘘をついたが、今回は神を信じ、信仰を全うするために嘘をついている。
6. And Abraham took the wood of the burnt offering and laid it on Isaac his son. And he took in his hand the fire and the knife. So they went both of them together.
アブラハムは燔祭のたきぎを取って、その子イサクに負わせ、手に火と刃物とを執って、ふたり一緒に行った。
- 自分を焼くための薪を背負わされるイサク。自らを磔刑にするための十字架を運ぶイエスを彷彿とさせるが、意味合いが異なりそう。イエスは自らの運命を知ってなおそうするが、イサクは知らぬままにそうさせられている。
7. And Isaac said to his father Abraham, “My father!” And he said, “Here I am, my son.” He said, “Behold, the fire and the wood, but where is the lamb for a burnt offering?”
やがてイサクは父アブラハムに言った、「父よ」。彼は答えた、「子よ、わたしはここにいます」。イサクは言った、「火とたきぎとはありますが、燔祭の小羊はどこにありますか」。
- その答えは「お前が子羊になるんだよ!」だ。
8. Abraham said, “God will provide for himself the lamb for a burnt offering, my son.” So they went both of them together.
アブラハムは言った、「子よ、神みずから燔祭の小羊を備えてくださるであろう」。こうしてふたりは一緒に行った。
- 嘘を吐いているようで、嘘はついていない。アブラハムには「燔祭の子羊=イサク」と分かっていて、それをイサクに悟らせぬような言い回しにしているに留めている。
9. When they came to the place of which God had told him, Abraham built the altar there and laid the wood in order and bound Isaac his son and laid him on the altar, on top of the wood.
彼らが神の示された場所にきたとき、アブラハムはそこに祭壇を築き、たきぎを並べ、その子イサクを縛って祭壇のたきぎの上に載せた。
10. Then Abraham reached out his hand and took the knife to slaughter his son.
そしてアブラハムが手を差し伸べ、刃物を執ってその子を殺そうとした時、
- slaughter:屠殺する
イサクを子羊に擬えた表現。
11. But the angel of the Lord called to him from heaven and said, “Abraham, Abraham!” And he said, “Here I am.”
主の使が天から彼を呼んで言った、「アブラハムよ、アブラハムよ」。彼は答えた、「はい、ここにおります」。
- 1節でのやり取りと同じ。ただしここでは神ではなくみ使いである。
- み使いが、神の命令の通りに実行しようとするアブラハムを制止する。
12. He said, “Do not lay your hand on the boy or do anything to him, for now I know that you fear God, seeing you have not withheld your son, your only son, from me.”
み使が言った、「わらべを手にかけてはならない。また何も彼にしてはならない。あなたの子、あなたのひとり子をさえ、わたしのために惜しまないので、あなたが神を恐れる者であることをわたしは今知った」。
- み使いは神の言葉を代弁しているので、「わたしのために惜しまない」となっている。
- この場面は多くの宗教画で題材にされている。(イサク奉献,イサクの燔祭)
- この一連の流れはかなり重要な箇所で、キルケゴール『恐れとおののき』、デリダ『死を与える』などで論じられているようだ。論点は「神への信仰」と「人間の倫理」の対立(「神が命じたから」といって理由も聞かずに息子イサクを殺そうとするアブラハムは、人間の倫理から見れば狂気である。しかしアブラハムが人間の倫理を超える信仰を持っていた(=神を恐れた)からこそ神はイサクを助けた)。
13. And Abraham lifted up his eyes and looked, and behold, behind him was a ram, caught in a thicket by his horns. And Abraham went and took the ram and offered it up as a burnt offering instead of his son.
この時アブラハムが目をあげて見ると、うしろに、角をやぶに掛けている一頭の雄羊がいた。アブラハムは行ってその雄羊を捕え、それをその子のかわりに燔祭としてささげた。
14. So Abraham called the name of that place, “The Lord will provide”; as it is said to this day, “On the mount of the Lord it shall be provided.”
それでアブラハムはその所の名をアドナイ・エレと呼んだ。これにより、人々は今日もなお「主の山に備えあり」と言う。
- [Bible Gateway註;provide, providedはsee, seenとも]
provide は「備えをもたらす」の意だが、see にもそのような用法がある(see to it that ~ で「~するよう取り計らう」)。そもそも provide も語源的には「前もって見る」であり、その名詞形が「providence(神慮,摂理)」である。 - イサクの身代わりとなる羊を神が用意していたことから、「神が備えをもたらした山」の名がついた、という話。
15. And the angel of the Lord called to Abraham a second time from heaven
主の使は再び天からアブラハムを呼んで、
16. and said, “By myself I have sworn, declares the Lord, because you have done this and have not withheld your son, your only son,
言った、「主は言われた、『わたしは自分をさして誓う。あなたがこの事をし、あなたの子、あなたのひとり子をも惜しまなかったので、
- 12節ではみ使いは神を指して「私(I, me)」と言っていたはずだけど、今度はthe Lordとなっている。
17. I will surely bless you, and I will surely multiply your offspring as the stars of heaven and as the sand that is on the seashore. And your offspring shall possess the gate of his enemies,
わたしは大いにあなたを祝福し、大いにあなたの子孫をふやして、天の星のように、浜べの砂のようにする。あなたの子孫は敵の門を打ち取り、
18. and in your offspring shall all the nations of the earth be blessed, because you have obeyed my voice.”
また地のもろもろの国民はあなたの子孫によって祝福を得るであろう。あなたがわたしの言葉に従ったからである』」。
- 英訳における一連のみ使いのセリフは、直接話法の中に自由間接話法を含む構造をとっている。「I(私)」が誰を指すのか若干読みにくい。文脈を読めば神を指すことは明らかだけど。
- アブラハムが神の命令を疑わずに実行寸前まで至ったから、アブラハムの子孫が繁栄する。
19. So Abraham returned to his young men, and they arose and went together to Beersheba. And Abraham lived at Beersheba.
アブラハムは若者たちの所に帰り、みな立って、共にベエルシバへ行った。そしてアブラハムはベエルシバに住んだ。
- 5節で放った言葉はこうして実現し、嘘でないことになった。
- サラは? まあ流石に一緒にベエルシバに移住したのかな。
20. Now after these things it was told to Abraham, “Behold, Milcah also has borne children to your brother Nahor:
これらの事の後、ある人がアブラハムに告げて言った、「ミルカもまたあなたの兄弟ナホルに子どもを産みました。
21. Uz his firstborn, Buz his brother, Kemuel the father of Aram,
長男はウヅ、弟はブズ、次はアラムの父ケムエル、
22. Chesed, Hazo, Pildash, Jidlaph, and Bethuel.”
次はケセデ、ハゾ、ピルダシ、エデラフ、ベトエルです」。
23. (Bethuel fathered Rebekah.) These eight Milcah bore to Nahor, Abraham's brother.
ベトエルの子はリベカであって、これら八人はミルカがアブラハムの兄弟ナホルに産んだのである。
24. Moreover, his concubine, whose name was Reumah, bore Tebah, Gaham, Tahash, and Maacah.
ナホルのそばめで、名をルマという女もまたテバ、ガハム、タハシおよびマアカを産んだ。
- concubine:妾,側室,側女。
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