Wakaksitesis

感想・備忘録・夏休みの自由研究

6月の履修作品

2022/06の履修作品メモ。

以下ネタバレを含む場合があります。

 

映画『死刑にいたる病』

阿部サダヲが気持ち悪くて良かった。表情の動かし方、体幹の良さ、漆黒の瞳、喋り方。全てが良かった。阿部サダヲってやっぱりすごい。

筋書としては、「呪い」のお話だなと思った。タイトルの通り「病」と言ってもよいけど、私は「呪い」と呼ぶと思う。
演出面では、主人公が徐々に阿部サダヲに同化していくことを示唆する演出がすごくうまい。(面会ガラスで重なる演出とか。)
阿部サダヲは、愛を与えられていない子供を狙って優しさを与えて飼い馴らす手口を使うのだが、それにより閉じた関係性を作り出し、自分に依存させる。物語のオチとして、ヒロインも阿部サダヲの息のかかった人間だと分かるのだが、つまり、物語の割と何もかもが阿部サダヲ支配下にあったことになる。物語上の人間関係も、シナリオも、阿部サダヲによって閉じた系となっている二重構造があるのかな、と思えて面白かった。

 

ゲーム『FGO 第2部第6.5章 死想顕現界域トラオム』

若モリアーティが良かった。読んだ直後の殴り書きで書いた感想は下記。

badmelodies.hatenablog.com

 

小説『Loss of Breath』

エドガー・アラン・ポー著。不条理ブラックユーモア。妻に罵詈雑言を吐き、決定的な一言を投げかけようとした瞬間に、「息」を失くしてしまったと気付いた主人公が、どんな状態になってもなぜか「生きている」状態を保ち、様々な場所を転々として最終的に「息」を取り戻す話。想像するとグロい情景になっているのに平気で淡々と描写をしていくのが面白い。……のだけれど、英語で読んだので、使われている表現や単語が難しくて読むのが大変だった。

論考『人生の短さについて』

セネカ著。「人生は短いのではなく、むしろ十分長い。人生は浪費されているのだ」と説く短編。

私はよく不思議に思って見ることがあるが、誰かが時間をくれるように求めると、頼まれたほうは、いとも簡単にそれに応ずることだ。両者の狙っているのは、時間が求められたゆえんの目的であって、時間そのものなどはどちらも狙っていない。いわば何でもないもののように求められ、何でもないもののように与えられる。何よりも尊いものである時間が、もてあそばれているわけである。そのうえ時間は無形なものであり、肉眼には映らないから、人々はそれを見失ってしまう。それゆえにまた、最も安価なものと評価される。それどころか、時間はほとんど無価値なものであるとされる。

 

アニメ『ゴールデンカムイ』シーズン1~シーズン3

無料期間中に漫画を全て読んでしまった(もちろん非常に面白かった)が、アニメも見てみた。偽アイヌの村が丸ごと飛ばされていたので、少し寂しかった。土方さんがジョージなの、個人的に最初は違和感があったけれど、見ていくとかなり馴染んで良かった。

 

映画『凶悪』

主演・山田孝之。上記の『死刑にいたる病』と同監督。山田孝之演じる雑誌記者が、ピエール瀧演じる死刑囚の依頼で捕まっていない首謀者を暴くスクープ記事を書くことになり、調査していくお話。記者の仕事にのめり込み、家庭を疎かにしてしまう。死刑囚は途中でキリスト教に入信し、「生きる喜びをかみしめてる」的なことを言うのだが、それに対して主人公が「お前なんかが生きる喜びをかみしめるな」と怒鳴るシーンは印象に残った。タイトルに「凶悪」とある通り、ある種「凶悪な人」(一度道を踏み外すと感覚がマヒして、その行動を繰り返す人)が多いわけだけれど、もちろん主人公も含んでるんだろうな。

 

アニメ『エルフェンリート

かねてから見なければと思っていたアニメのひとつ。良かった。OPがめちゃくちゃ有名。二次創作がめちゃくちゃされてそう。差別と救いのお話と捉えた。

 

漫画『宝石の国』1話~95話

連載再開記念で無料になっている部分を読んだ(正確には89話までが無料部分だった気がするが)。フォスフォフィライトがいくらでも報われなくて凄い。最終回までにどうなるのか気になる。愛も憎悪も執着も確執も、自分という存在の原動力(存在証明)になっている感情(価値)を意にも介さずに世界は廻っているのだという絶望がまざまざと感じられて、良かった(良いか?)。フォス、『テイルズオブジアビス』の序盤ルークに近いものを感じる。

 

漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第6部,第7部,第8部

再読。たまに読み返したくなる。現在聖書を読んでいるので、いま読み返してみたらプッチの解像度が上がっているかなと思って6部を読み返したのだが、そのまま7部と8部も読んでしまった形。

・[6部]プッチが平静さを保つために素数を数えるのは、素数が1(神)と自分自身でしか割れない数だからだろう。信仰には、神と自分自身しか必要ではない。

・[6部]やっぱり覚悟とは暗闇の荒野で進むべき道を切り開くことであって、既知の未来をなぞることではないんだよなあ。

・[7部]はやくアニメ化して……。ASBではジャイロの声が三木眞一郎さんだったけれど、アニメだと違う人が声当てそうだよな……。それでもお話として好きなので、アニメでも見てみたい。

・[8部]7部もそうだが、存在物を統制する「理」が敵に回るとき、打破する術は「存在しない物」しかない、というロジックがある。「回転」や「穴」は概念。

・[7, 8部]世界観として、世界の幸不幸の総量は決まっていて、だからこそ自分が降伏になるためには、幸福だけを残して不幸を誰かにおっかぶせる必要がある。そういうロジックがラスボスにある感じ。D4Cラブトレインもロカカカの等価交換もそういう感じ。

・[8部]定助が何者か、という話は、もしかするとジョジョリオンとはどういう物語か、ということのメタファーかも。冒頭と最後に言われるが、ジョジョリオンは「呪いを解く物語」。定助の正体を考えると、この場合呪いとは「ジョジョシリーズ」(シリーズもの)だということかも。定助は他の誰でもない定助だ。