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感想・備忘録・夏休みの自由研究

FGOの和名宝具が北米版でどんな表現になっているか調べた

 FGOの宝具のうち、ルビが日本語である宝具の名称が北米版でどうなっているのか。表現の対応に関するメモ。

©fgoproject

 FGOで「宝具」は、「○○(△△)」という形式で、ルビが振られる形式の名称をとる(Fateシリーズ全体でそうである)。
 確認したところ、北米版FGOの宝具名はほとんどがルビ部分をとっているようである。例えば、上掲の土方歳三の宝具は日本版では「不滅の誠(しんせんぐみ)」という名称で、北米版では「Shinsengumi」という名称である。(例外はサロメの「ファム・ファタル・ベゼ(あなたにくちづけしたわ)」。北米版では Femme Fatale Baiser という名称で、ルビ部分の英訳ではない。)
 そこで今回はそのルビ部分が日本語になっている――もっと単純には、カタカナではなくひらがなで表記されている宝具(一部漢字あり。漢字でルビを振るな)について、北米版FGOでどのように表現されているのかを調べ、3つの英訳パターンにまとめてみた。
(2022年6月12日現在、日本版ではNo. 348の張角まで実装されているが、北米版ではNo. 283の宇津見エリセまでしか実装されていないので、そこまでのサーヴァントが対象となる。)

ローマ字表記が採用されているパターン

 英訳されておらず、日本語の名称がそのままローマ字表記で採用されている宝具。

  • 不滅の誠(しんせんぐみ)〔土方歳三
    Shinsengumi
  • 人間無骨(にんげんむこつ)〔森長可
    Ningen Mukotsu
  • 魔剣破り、承る!(がんりゅうじま)〔宮本武蔵(水着)〕
    Ganryu-jima
  • 紅葉狩(もみじがり)〔鬼女紅葉〕
    Momijigari
  • 天遡鉾(アメノサカホコ)〔宇津見エリセ〕
    Amenosakahoko
     当然だが、固有名詞的な言葉はそのままローマ字表記になっている。
     「新選組」は団体の固有名称、「人間無骨」は槍の固有名称、「巌流島」は地名、「アメノサカホコ」は日本神話に見られる鉾の固有名称。「紅葉狩」がそのままなのは能や歌舞伎の演目名を典拠としているからだろうか。

  • 絡繰幻法・呑牛(からくりげんぽう・どんぎゅう)〔加藤段蔵〕
    Karakuri Genpou, Dongyu
  • 始末剣(しまつけん)〔岡田以蔵
    Shimatsuken
     このへんもまあ、固有名詞……? 「呑牛」が固有名詞的なのはまだ分かる。「絡繰幻法」は訳しようがありそうな、なさそうな。

  • 無明三段突き(むみょうさんだんづき)〔沖田総司
    Mumyou Sandanzuki
  • ジェット三段突き(じぇっとさんだんづき)〔オキタ・J・ソウジ(第一再臨,第三再臨)〕
    Jet Sandanzuki
  • 絶剱・無穹三段(ぜっけん・むきゅうさんだん)〔沖田総司(オルタ)〕
    Zekken, Mukyusandan
     「三段突き」は固有名詞らしい。

  • 口寄せ・伊吹大明神縁起(くちよせ・いぶきだいみょうじんえんぎ)〔望月千代女〕
    Kuchiyose, Ibukidaimyoujin-Engi
  • 剣術無双・剣禅一如(けんじゅつむそう・けんぜんいちにょ)〔柳生但馬守宗矩〕
    Kenjutsu Musou, Kenzen Ichinyo
  • 天駆ける竜が如く(あまかけるりゅうがごとく)〔坂本龍馬
    Amakakeru Ryu ga Gotoku
     そのままなのが少し不思議なものたち。意味よりも音の響きを優先しているのかもしれない。

英訳されているパターン

 正確に言えば、部分的に英訳されているものも含む。

  • 五百羅漢補陀落渡海(ごひゃくらかんふだらくとかい)〔武蔵坊弁慶
    Pilgrimage of the Five Hundred Arhat
     「補陀落」とは観音菩薩の降臨する霊場で、観音菩薩の降り立つとされる伝説上の山。「補陀落渡海」はその補陀落浄土を目指して船で単身渡海すること。この「補陀落渡海」は「巡礼の旅」を意味する pilgrimage と英訳されている。
     また、「羅漢」とは「阿羅漢」(仏教において最高の悟りを得た、尊敬や施しを受けるに相応しい聖者)のことで、サンスクリット語の arhat が元である。

  • 壇ノ浦・八艘跳(だんのうら・はっそうとび)〔牛若丸〕
    Dan-No-Ura Eight-Boat Leap
     「壇ノ浦」は固有名詞。「八艘跳」は eight-boat leap と訳されている。

  • 燕返し(つばめがえし)〔佐々木小次郎
    Swallow Reversal
     「燕返し」とは「ある方向に振った刀のきっ先を、急に反転させて相手を斬る刀法」であるので、「返し」を reversal(反転)と訳すのはそんなにズレてない……か?

  • 石兵八陣(かえらずのじん)〔諸葛孔明
    Unreturning Formation
  • 混元一陣(かたらずのじん)〔司馬懿
    Unspoken Formation
  • 掎角一陣(きかくいちじん)〔陳宮
    Two-Pronged Formation
     「陣」系の宝具。いずれも formation(陣形)。「帰らず」が unreturning(帰らない)、「語らず」が unspoken(語られない)と訳されているのは態が若干気になる。「語らずの陣」は「語られない陣」だったのか。「掎角」にあたる two-pronged は、原義では「2つの先を有する」の意だが、そこから派生して a two-pronged attack「二面攻撃」というような用法をもつ。

《「掎」は鹿を捕らえるのに後ろ足をとる意、「角」は前から角 (つの) をとる意》
前後呼応して敵を制すること。
2 両雄が、相対して争うこと。「―の勢をなす」
掎角(きかく)の意味 - goo国語辞書

  • 毘天八相車懸りの陣(びてんはっそう くるまがかりのじん)〔長尾景虎
    Bishamonten’s Eight Aspect Rotating Formation
     「毘天」は毘沙門天(Bishamonten)のこと。毘沙門天サンスクリット語名は「ヴァイシュラヴァナ」であるが、こちらではなくあくまで日本語名「毘沙門天」を採用している。「八相」は eight aspect(8つの様相)。「車懸かりの陣」とは「車が回るように、一番手・二番手・三番手と休みなく兵を繰り出して敵に攻めかかる戦法」であるので、rotationg formation(交替して攻める陣形)と訳されている。

  • 三千世界(さんだんうち)〔織田信長
    Three Line Formation
     「陣」という日本語は使われていないが、Formation と訳されている。織田信長の三段撃ちは、それこそ1列目・2列目・3列目が交代で鉄砲を撃つことにより休みなく敵に攻撃をすることができる陣形である。

  • 不還匕首(ただ、あやめるのみ)〔荊軻
    All I Do Is Kill
     All I do is kill. は直訳では「私の為す全ては殺めることである」なので、「ただ、殺めるのみ」となる。

  • 転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)〔清姫
    Transforming, Flame-Emitting Meditation
     「転身」は transforming(変身,変形)、「火生」は flame-emitting(火を放出する)、「三昧」は meditation(瞑想)と訳されている。「三昧」は元は仏教用語で「精神を集中し雑念を捨てる事」を意味するため、meditation が採用されたのだろう。

  • 道成寺鐘百八式火竜薙(どうじょうじかねひゃくはちしきかりゅうなぎ)〔清姫(水着)〕
    Dojo-ji Bell Form 108 - Karyu-nagi
     「道成寺」は固有名詞。「火竜薙」は固有名詞的に Karyu-nagi と表現されている。「鐘」は bell、「百八式」は form 108 と訳されている。

  • 燦々日光午睡宮酒池肉林(さんさんにっこうひるやすみしゅちにくりん)〔タマモキャット〕
    Napping in the Dazzling Sunshine and Feasting
     漢字表記を参考にすると、英訳の直訳は「眩い日光の中での居眠り、祝宴」くらいの意味か。「燦々日光」が dazzling sunshine、「昼休み」が napping、「酒池肉林」が feasting に相当する。

  • 水天日光天照八野鎮石(すいてんにっこう あまてらすやのしずいし)〔玉藻の前〕
    Eightfold Blessing of Amaterasu
     英訳の直訳は「アマテラスの八重の恵み」となる。なぜ8なのかはあまり分からないが、EXTRAではこの宝具が「後の咫鏡」と説明されているようなので、そこと関係がありそう。日本神話でも8という数字は頻繁に登場するような特別な数字である。

  • 常夏日光・日除傘寵愛一神(とこなつにっこう・ひよけがさちょうあいいっしん)〔玉藻の前(水着)〕
    Tokonatsu Nikkou – Goddess’ Love Parasol
     「常夏日光」はそのまま。「日除傘寵愛一神」は goddess' love parasol と訳されており、直訳で「女神の愛の日傘」となる。

  • 無銘勝利剣(ひみつかりばー)〔謎のヒロインX〕
    Secret Calibur
     「ひみつ」は secret、「カリバー」は勿論 calibur。そのまんま。

  • 無垢識・空の境界(むくしき・からのきょうかい)〔両儀式
    Amalavijñāna – Boundary of Emptiness
     「両儀式」の宝具。amala-vijñāna は仏教用語で「阿摩羅識」と音写され、「無垢識」と訳される。六識説において、阿頼耶識が清浄となった識のこととされる(詳細)。Fateの「アラヤ」(人の抑止力)は「阿頼耶識(あらやしき)」の名に由来すると思うので、少し興味深い。「空の境界」はそのまま boundary of emptiness と訳されている。

  • 唯識直死の魔眼(ゆいしき・ちょくしのまがん)〔両儀式
    Vijñapti-mātratā – Mystic Eyes of Death Perception
  • 唯識・歪曲の魔眼(ゆいしき・わいきょくのまがん)〔浅上藤乃
    Vijñapti-mātratā – Mystic Eyes of Distortion
     vijñapti-mātratā は仏教用語で「唯識」と訳される。「自己およびこの世界の事物はわれわれの認識の表象にすぎず、認識以外の事物の実在しない」とする思想。外界の情報を受け取る器官である眼球を、外界へ影響を及ぼす器官へと作り変えた「魔眼」とは相性が良さそうな思想だ。
     その「魔眼」は mystic eyes と訳されている。「直死」は death perception(死の知覚)と訳されており、「直死」が「直視」+「死」から成る造語であること、「直死の魔眼」で「死を視る」ことを踏まえている。「歪曲」は distortion(歪める事,捻じ曲げる事)と訳されている。

  • 千紫万紅・神便鬼毒(せんしばんこう・しんぺんきどく)〔酒呑童子
    Multicolored Poison – Shinpen Kidoku
     英訳を直訳すると「多彩な色の毒―シンペンキドク」となる。「千紫万紅」とは「紫や紅などさまざまな色の花」あるいは「色とりどりの花が咲きみだれること」、そこから転じて「彩り豊かな様子」を表す。よって multicolored(多彩な色の)と訳されている。神便鬼毒は固有名詞的。

  • 五行山・釈迦如来ごぎょうさん・しゃかにょらいしょう)〔玄奘三蔵
    Five Elements Mountain Buddha Palm
     「五行山」が five elements mountain と訳されている。「五行」を five elements とするのは陰陽五行説からだろう。実際、この山はベトナムのダナンにあり、ホアソン(火山)、トゥイーソン(水山)、モックソン(木山)、キムソン(金山)、トーソン(土山)という5つの山から成るそう(参考)。element という語は中世では世界を構成する「四大元素」(エーテルを加えて五大元素とも)を意味した。
     「釈迦如来」は Buddha、「掌」は palmと訳されている。「釈迦如来」は仏教の始祖ゴータマのこと。本来「仏陀(Buddha)」は悟りを開いた者一般を指す名称であって個人を指す名称ではないが、特に仏教の始祖ゴータマを指すことが多いため、これでいいのだろう。

  • 牛王招雷・天網恢々(ごおうしょうらい・てんもうかいかい)〔源頼光
    Vengeful Lightning of the Ox-King
     英訳を直訳すると「牛王の報復の雷」となる。恐らく「牛王招雷」(牛王が雷を招く)に対応している。
     「天網恢々」は略さずに言うと「天網恢恢疎にして漏らさず」であり、出典は『老子』。天が張りめぐらした網は広くて目が粗いようだが、悪人・悪事は決して取り逃がさない、という意味。こちらは英語に反映されていない。

  • 釈提桓因・金剛杵(しゃくだいかんいん・こんごうしょ)〔源頼光(水着)〕
    Vajra of Indra
     英訳を直訳すると「インドラのヴァジュラ」となる。「釈提桓因」は帝釈天のことで、元はヒンドゥー教の神インドラが仏教に取り入れられたものである。vajra(ヴァジュラ)はインドラの雷のことで、「金剛杵」はその訳語である。

  • 羅生門大怨起(らしょうもんだいえんぎ)〔茨木童子
    Great Grudge of Rashomon
     「羅生門」は固有名詞。「大怨起」は great grudge(大きな遺恨,怨念)と訳されている。ちなみに grudge の原義は「ぶつぶつ不平を言う」である。

  • 八幡祈願・大妖射貫(なむはちまんだいぼさつ・このやにかごを)〔俵藤太〕
    Hachiman Prayer
     「八幡」は固有名詞。prayer は「祈り」の意。どうやら漢字表記の「八幡祈願」の部分のみが訳されているよう。

  • 鶴翼三連(かくよくさんれん)〔クロエ〕
    Triple Crane Wings
     triple が「三」、crane が「鶴」、wing が「翼」に対応する。

  • 六道五輪・倶利伽羅天象(りくどうごりん・くりからてんしょう)〔宮本武蔵
    Six Paths, Five Rings: Kurikara Divine Blade
     「六道」が six paths。「六道」は仏教用語で「衆生が業によって輪廻転生する6つの世界」のこと。実際「六道」は six paths と訳される。
     「五輪」が five rings。宮本武蔵の著した『五輪書』に由来すると思う。『五輪書』自体は密教の五輪(五大)に由来する(ちなみに、五大(地・水・火・風・空)は五行(火・水・木・金・土)とは異なる)。輪を ring と訳すのはそのまま過ぎないかと思うけれど、原語である日本語の情緒を残した形だろう(日本語でだって、「五輪」と言われたら「五つの輪っか?オリンピック?」ってなりそう)。
     倶利伽羅は固有名詞。divine blade は直訳すると「神の剣」となる。

  • 十面埋伏・無影の如く(じゅうめんまいふく・むえいのごとく)〔燕青〕
    Ambush From Ten Sides, Cast No Shadow
     英訳を直訳すると「十面からの待ち伏せ、影を落とさず」となる。「埋伏」は待ち伏せのこと。cast a shadow で「影を投げかける,落とす」。

  • 絢爛魔界日輪城(けんらんまかいにちりんじょう)〔茶々〕
    Radiant Demon Fortress of the Sun
     demon(悪魔)は「魔界」、fortess(砦,城砦)は「城」に対応する。「日輪」は太陽が丸いことに由来する名称。それを表現するために radiant(放射の,光を放つ)を使用したと思われる。関係ないけど、radius(半径),radiation(放射),radioactivity(放射能)と同語源である。

  • 天鬼雨(てんきあめ)〔鈴鹿御前〕
    Demonic Sun-Shower
     「天気雨」は「晴れているときに降る雨」のことで、sun-shower と訳されている。それのみならず、demonic が修飾されているのは漢字表記の「鬼」を反映するためだろう。

  • 告密羅織経(こくみつ らしょくけい)〔武則天
    Manual of Accusation
     英訳を直訳すると「告訴の手引き」となる。『告密羅織経』は、武則天が統治していた時代に記されていた、裁判所の役人(酷吏)の間で共有された書物のことで、拷問と尋問の指導書である。このことから転じてか、「羅織」は「無罪の人を罪におとしいれること」を意味することもあるようである。罪人を仕立て上げるための指導書、という英訳か。

  • 朧裏月十一式(おぼろうらづきじゅういちしき)〔宝蔵院胤舜
    Oboro Urazuki, Eleven Forms
     「朧裏月」は固有名称扱いのようだ。十一式は eleven forms となっておりふつう。

  • 白鷺城の百鬼八天堂(はくろじょうのひゃっきはちてんどうさま)〔刑部姫
    The Great Hachitendou of Hakuro Castle
     ほぼ固有名詞。「白鷺」「八天堂」は固有名詞。great と訳されているので、「百鬼」とは「八天堂様」の偉大さを飾る形容だったようだ(「様」を表すためかもしれないけど)

  • 白鷺城・千式ミリミリナイトフィーバー!(はくろじょう・せんしきミリミリナイトフィーバー)〔刑部姫(水着)〕
    Thousand Origami of Hakuro, Milli-Mili Night Fever
     上と同じく「白鷺」は固有名詞。「千式」は thousand origami と意訳されている(刑部姫は折り紙を使い魔として戦う)。「ナイトフィーバー(night fever)」はそのままだが、興味深いのは「ミリミリ」の部分。milli-mili となっており、畳語ではないとわかる。恐らく前者(milli-)は「1000」を意味する接頭辞で、後者(mili)は「軍隊」を表す military の略語だろう。

  • 地飛爽霊火尖槍(ちひそうれい かせんそう)〔哪吒〕
    Flying Bright Spirit, Fire-Tipped Spear
     「地飛」は flying(飛行する)に、「爽霊」は bright spirit(明るき霊)に相当すると思われる。「爽」という字には「明るい」という意味もあるようなので、そこを反映した形か。「爽霊」は道教において三魂のうちのひとつに数えられる(哪吒の宝具セリフにも「三魂飛んで七魄霧散」というフレーズがある)。
     「火尖」は fire-tipped(火が先端に付いた)に、「槍」は spear に相当する。「火尖槍」は哪吒のもつ槍の名で、じゅうぶん固有名詞的だと思うが、意訳されている。

  • 冨嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)〔葛飾北斎
    Thirty-Six Views of Mount Fuji
     「冨嶽」は富士山のことで、つまり Mount Fuji に相当する。「三十六景」は thirty-six views と訳されている。ふつう。

  • 天狗ノ羽団扇・暴風(てんぐのはうちわ・あからしまかぜ)〔牛若丸(水着)〕
    Tengu's Fan, Akarashimakaze
     「天狗」は tengu、「暴風」は akarashimakaze とそのまま。「あからしまかぜ」は急に吹く風のこと。「羽団扇」は単に fan と表現されている。

  • 蒼輝銀河即ちコスモスエーテル宇宙然るに秩序)〔謎のヒロインX(水着)〕
    Etherspace, Yet Lawful
     etherspace は「エーテル宇宙」に対応する。either は、古くは古代ギリシャアリストテレスによって四大元素説が拡張され、天を満たす「第五元素(quintessence)」とされた「アイテール(aithēr)」に由来する(アリストテレス以前にもこの言葉自体はあったが)。Fateでもエーテルは「第五真説要素(真エーテル)」「第五架空要素(エーテル)」と区分され、世界設定的に重要な意味を帯びているよう(詳しくは知らない)。
     「然るに」は yet で表現されている。「秩序」は lawful(合法の)と訳されている。lawful は現実では法律に関する言葉だが、この宝具ではどちらかといえば「法則」の方のニュアンスな気がする(結局、同じことだが)。また、被ルビ部分(?)の「コスモス(kosmos)」も古代ギリシャ語で「秩序」を意味する言葉である。

  • 護法少女・九頭竜鏖殺(ごほうしょうじょ・くずりゅうおうさつ)〔酒呑童子(術)〕
    Magifender Girl, Kuzuryu Massacre
     「護法少女」は magifender girl と表現されている。magifender は恐らく magic(魔法)+ defender(守護者)から成るかばん語(portmanteau word)である。
     九頭竜は固有名詞。「鏖殺」は massacre(皆殺し)と表現されている。

  • 力抜山兮氣蓋世(ばつざんがいせい)〔項羽
    Mountainous Strength, Conquering Might
     まず、そもそも「力抜山兮氣蓋世」は、項羽が虞美人に贈った詩「垓下の歌」の一行目である。「(吾が)力は山をも動かし、(吾が)気迫は世界をも覆うほどに強大だ」の意。ルビ部分の「抜山蓋世」はこの行に由来する故事成語で、「威勢が非常に強く、気力が極めて盛んなこと」の意である。
     英訳を直訳すると「山が如き力、征服せんとする力」といった感じ。故事成語の意味を反映した形だろう。

  • 蘭陵王入陣曲(いさましきはかめんのもの、おんようけんびのりょうおうなり)〔蘭陵王
    Prince of Lan Ling in Battle
     英訳を直訳すると「戦闘中の蘭陵の王子」となる。そもそも漢字部分「蘭陵王入陣曲」は蘭陵王の勇猛を称える歌謡であり、ルビ部分「勇ましきは仮面の者、音容兼備の陵王なり」は戦闘する蘭陵王を称える言葉だろう。それで、英訳ではその称賛対象である「戦闘中の蘭陵王」とそのまま表現したのかもしれない。

  • 崇禎帝四詩歌(むよくにしてちゅうぎのうた)〔秦良玉〕
    Poem of Altruism and Loyalty
     ルビ部分「無欲にして忠義の詩」を英訳したもの。altruism(利他主義)は「無欲」に、loyalty(忠誠さ)は「忠義」に対応している。

  • 十王判決・葛籠の道行(じゅうおうはんけつ・つづらのみちゆき)〔紅閻魔〕
    Judgment by the Ten Kings, Wicker Box’s Fate
     「十王判決」は judgement by the Ten Kings(十王による判決)、「葛籠」は wicker box(編み込み細工の箱)、「道行」は fate(運命)と訳されている。

  • 星天を照らせ地の朔月(ほしにねがいを)〔美遊・エーデルフェルト〕
    Wish Upon the Stars
     「ほしにねがいを」は元々ディズニー映画『ピノキオ』の主題歌「When You Wish Upon A Star」の邦題である。これとは違い、この宝具では a star ではなく the stars となっている。プリズマイリヤを履修したら意味が分かるのかな。

  • 源氏物語・葵・物の怪(げんじものがたり・あおい・もののけ)〔紫式部
    Tale of Genji, Aoi, Evil Spirit
     「葵」は固有名詞。「源氏物語」は Tale of Genji(源氏の物語)、「物の怪」は evil spirit(邪悪な精霊)と訳されている。

  • 波旬変生・三千大千天魔王(はじゅんへんじょう・さんぜんだいせんてんまおう)〔魔王信長〕
    Pāpīyas Reborn, Demon King of the Myriad Heavens
     「波旬」は元々サンスクリット語 Pāpīyas(パーピーヤス)の音写で、「悪意ある者」の意。「変生」は reborn(再誕)と訳されている。「三千大千天」は the myriad heavens(無数の天)、「魔王」は demon king と訳されている。ちなみに myriad の原義は「10000」であり、そこから「無数の」の意味に派生した。

  • 蒼穹三段突き(しののめにきらめくむみょうのひかり)〔オキタ・J・ソウジ(第二再臨)〕
    The Mumyou's Light Radiates at Dawn
     英訳を直訳すると「無明の光は東雲に煌めく」となる。「無明」はそのまま。「東雲(しののめ)」は夜明けのことで、dawn(夜明け)と訳されている。「きらめく」は radiate と表現されている。radiate(放射する)は一点から放射状にものが広がるさまを表しているので、「煌めく」の訳としては悪くない気がする。

  • 諸国瀧廻り(しょこくたきめぐり)〔葛飾北斎(水着)〕
    A Tour of Waterfalls in Various Provinces
     「諸国」は various provinces(様々な地域(州,国,省))、瀧廻りは a tour of waterfalls と訳されている。

  • 霓裳羽衣比翼連理(げいしょううい ひよくれんり)〔楊貴妃
    Rainbow Feathered Robe, Vow of Eternal Love
     「霓裳羽衣」は「女性の美しくて軽やかな衣装」の意で、rainbow feathered robe と訳されている。細かく見れば「霓」は虹(rainbow)のこと(厳密に言えば「霓」は雌のにじで、「虹」は雄のにじである)で、「羽」は feathered(羽毛でできた)で表現されている。また、「霓裳羽衣の曲」は玄宗皇帝が楊貴妃のために作ったとされる曲である(白居易長恨歌』)。
     「比翼連理」は vow of eternal love(永遠なる愛の誓い)と訳されている。「比翼連理」はもともと、玄宗皇帝と楊貴妃が誓い合った言葉であり(白居易長恨歌』)参考)、仲睦まじい夫婦のたとえ、固くちぎり合った男女のたとえとして用いられる。

その他

  • 无二打(にのうちいらず)〔李書文(殺)〕
    Wu Er Da
  • 神槍无二打(しんそうにのうちいらず)〔李書文(槍)〕
    Shen Qiang Wu Er Da
     それぞれ漢字のピンイン表記にあたる。

 

22/08/07追記

水着イベでサーヴァントが追加されているので、追記。

  • VR新陰流奥義・巴淵太陽剣(ぶいあーるしんかげりゅうおうぎ・ともえがふちたいようけん)〔巴御前(水着)〕
    VR Shinkageryu Hidden Technique: Tomoe-ga-Fuchi Taiyo-ken
     「奥義」が hidden technique(隠された技術)と訳されている以外は、そのまんま。

  • 衣通郎姫・蜘蛛行(そとおりひめ・くものおこない)〔紫式部(水着)〕
    Sotohrihime, Spider's Conduct
     「衣通郎姫(そとおりひめ)」は固有名詞。「蜘蛛行」は spider's conduct と訳されている。割とそのまま。「蜘蛛の行い」という表現自体は「蜘蛛が糸で巣をかけるさま」を表し、そこからの類推で蜘蛛が人の衣につくと親しい人がやってくるという俗信があったそう。

 

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