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感想・備忘録・夏休みの自由研究

period、周期性の話

英単語に関する覚え書き、第2回目。periodについて。

 

periodは様々な意味を持つ、いわゆる「多義語」である。

具体的には「期間」「時代」「時限」「終止符(.)」「周期」の用法がある。

どのような概念から派生してきたものなのか、整理しておこうと思う。

 

Online Etymology Dictionaryのperiodの項では、次のように記載されている。

early 15c., periode, "a course or extent of time; a cycle of recurrence of a disease," from Old French periode (14c.) and directly from Medieval Latin periodus "recurring portion, cycle," from Latin periodus "a complete sentence," also "cycle of the Greek games," from Greek periodos "cycle, circuit, period of time," literally "a going around," from peri "around" + hodos "a going, traveling, journey; a way, path, road," a word of uncertain origin.

古代ギリシャperi「周り」+ hodos「道」

古代ギリシャperiodos「一回り、周期、回路、期間」

ラテン語 periodus 「完全な文」「ギリシャの競技会の周期」

➡ 古フランス語 periode、中期ラテン語 periodus「繰り返し部分、周期」

➡ 15世紀初期、periode「時間の経過あるいは範囲(期間)、病が再発する周期」

という感じ。

つまり、periodは「一回りの道、周回の道」を意味する言葉に由来している。

「一周回にかかる時間」➡「周期」➡「期間」➡「時期、時代」と派生したと理解できる。

また、文を区切る「終止符」の意味は、それが《文の一周期》を表すからだろう。

period という言葉の背後には「周期性」「繰り返し」という概念がありそうである。

 

そういえば、旧約聖書の創世記第1章では神が1日ごとに創造を行う様子が描かれているが、1日目に明暗を分け、それぞれを昼夜と名付けている。ここから世界に周期性が現れ、それに合わせて文章形式の面でもそれ以降6日目まで繰り返しの表現が用いられる(神が言葉によって創造を宣言し、その言葉の通りに創造が行われ、神が被造物を見てその存在を良しとし、夕となり、また朝となる)。

また、periodの語源的過程で、「完全な文」を表すラテン語 periodus があったが、現代英語ではこの意味は sentence が担っている。そしてsentenceもまた、神と関連のある言葉である。14世紀頃、sentence(判決文)は「神によって与えられた判断」であり、裁判とは「異端審問(神の法に背いていないかどうかを判断する)」の場であった。そこからsentenceの意味が「文法的に完全な文」を意味するようになったのは、「判決文」が「神の言葉」であったことと関係しているかもしれない。

個人的には、周期性の概念はかなり人間にとって基礎的であると思っている。私達は当然のように、昨日生きたように今日を生き、今日生きたように明日も生きていく。共通性、抽象性を介して物事を分類せざるをえない人間たちは、それに則り周期性のなかで生きている。ただし、サーカディアンリズム(circadian rhythm;概日リズム)を代表とするリズムなどもあり、多くの生物にそういう周期性が組み込まれているような節があるから、人間だけの話ではないと思う。そもそも繁殖による世代交代がある時点で、そこに周期性を認めることが出来る。なんにせよ、聖書の始まり――第1日目の創造物として周期性の創造があることは、注目に値すると思う。(聖書は読み進めている途中で、感想の記事をちまちま書く予定)

 

hodos に由来する他の単語

せっかくなので、hodos (道) に由来する単語を列挙しておく。

  • method:方法
    この言葉は meta- "after" + hodos "way" から成る。元は「後についていくこと」ほどの意味だったようだ。meta- の "after" の用法は metaphysics「形而上学」で有名である。
  • episode:挿話
    この言葉は epi- "on; in addition" + eisodos "entrance" から成る。eisodoseis "into" + hodos "way" から成る。元は「付け加えて中に入ったもの」ほどの意味。
  • exodus:脱出、[the E-]出エジプト、[E-]出エジプト記
    この言葉は ex- "out" + hodos "way" から成る。元は「外に出ること」である。
  • anode:アノード(正電荷が流れ出す電極)
    cathode:カソード(正電荷が流れ込む電極)
    anode は ana- "up" + hodos "way" から成り、cathode は kata- "down" + hodos "way" から成る。単純に考えれば、上から下へと落ちる空間(坂)的なメタファーになっている(ただ、調べてみると興味深い話があったので載せておく

    http://www.chem.konan-u.ac.jp/PCSI/web_material/Faraday.pdf

    )。この言葉が造られたのは1834年(ヒューウェルが提唱し、ファラデーが使用した)で、陰極線(cathode ray)、電子(electron)が発見されるのはそれより後のことである。電流の方向が《プラスからマイナス》と決められた後に負電荷をもつ電子が発見され、それが《マイナスからプラス》に流れていることが発見されたことが原因で、現在でも電流と電子の流れは逆のままにされているという話は有名だろう。

 

参考